タイヤ空気圧の雑学うんちく百科

F1がドライエアーを入れる理由

F1のイメージ

■コンマ数秒を競うF1ならではのシビアな空気圧調整

空気は熱によって膨張します。ということは走行によるタイヤの加熱によって、空気の体積は増加し空気圧は高くなります。
空気圧が車の走行性能を大きく左右することはいうまでもありませんが、モータースポーツの頂点といわれるF1ともなると、ドライバーはわずか5kPaの差も敏感に感知すると言われ、非常にシビアに最適値が追求されています。平均速度約200km/hというF1のタイヤは走行時に80~100˚Cまで上昇するそうですが、その状態で最高の性能を発揮させるために、ピットクルーは空気の熱膨張率を計算に入れて空気圧を調整しなければなりません。

■開催地やレース当日の天候などにより、
異なる空気の「質」がシビアな調整のネックになる

しかし、この「計算」を狂わすのが、「湿度」──すなわち空気に含まれる水分です。水分は加熱によって水蒸気になりますが、空気よりも熱による膨張率が大きいため、湿度が高い場合には、走行時の空気圧が高くなりすぎます。
F1グランプリはご存知の通り、気候が大きくちがう世界各国のサーキットが舞台。開催地の気候やレース当日の天候によって湿度は大きく変化します。「その場にある空気」をそのまま充填していたのでは、走行時の最適空気圧を算出するのが非常に難しくなってしまいます。
この難題を解決するのが水分を除去した「ドライエア」です。水分を含まないから、どのような状況でも精度の高い空気圧調整を可能にし、ドライバーの感覚にフィットする最高の走行性能が実現できるというわけです。

■空気の「質」は、今後もさらに進化する。

車の性能を極限まで追求し、常に熾烈な戦いを繰り広げるF1の世界では、空気圧のもたらすパフォーマンスをどこまでひきだせるかということも、勝利を引き寄せる重大なファクターのひとつ。ドライエア充填が当たり前になった現在、次なる進化を目指して、熱による膨張率が空気よりも少ない別の気体の研究を進めているチームもあるとか。