タイヤ空気圧の雑学うんちく百科

空気を入れないタイヤ「ノーパンクタイヤ」

■空気が入っていないのだから、絶対パンクしない

空気入りタイヤが登場する1860年代以前、自動車はホイールにゴムの帯を巻いただけのタイヤを履いていて、最高時速は約30キロ程度でした(基礎編:「空気圧とタイヤ性能」参照)。その後空気入りタイヤが登場し、タイヤの歴史は大きく変わりましたが、現在でも高速走行をしない産業車両や電動車椅子といった乗り物の中には、ゴムなどが中まで詰まっている「空気なしタイヤ」を履いているものがあります。
最大のメリットは、もちろん絶対パンクしない、ということですが、空気入りタイヤのように中に入っている空気の「量」で、支えられる重さが決まるわけではないので、比較的小さなタイヤでも重量物が運べるという利点があります(うんちく百科「自転車から航空機まで、タイヤによって空気圧はどれくらい違うのか?」参照)。
こうしたタイヤは分類上「空気入り(ニューマチック)タイヤ」に対して「ソリッド(個体)タイヤ」と定義されますが、一般的には分かりやすく「ノーパンクタイヤ」とも呼ばれ、要求性能に応じていくつかの種類に分かれています。

■ノーパンクタイヤの種類

ノーパンクタイヤの種類

「多層ゴムタイプ」は物流センターなどで活躍するフォークリフト用に普及しています。2層よりも3層の方が、クッション性のある柔らかいゴムが入っている分、乗り心地がいいのが特色。
「ウレタン注入型」は、飛行場の貨物運搬用カートや工場のなかで働く産業車両をはじめ、電動車椅子や一部の自転車でも使われています。現在では中に注入する素材はウレタンの他にも、様々なものが開発されており、また注入する量も変えられるタイプもあります。
「プレスオン型」は小さくても、大きな荷重に耐えられるのが特色。停止した状態でもフォークの爪を前に伸ばして、パレットなどに差し込めるリーチ型フォークリフトは、前輪に大きな荷重がかかりますが、設計上あまり大きなタイヤは装着できないので、このタイプのタイヤを採用。小径であるがゆえに、他のフォークリフトより小回りがきくというメリットも創出しています。

■ノーパンクタイヤのデメリット

「パンクしない」「小さくても大きな荷重に耐えられる」という空気入りタイヤにはない特色を持ち、様々な分野で活躍するノーパンクタイヤですが、空気入りタイヤと比較した場合に、もちろんデメリットもあります。

1. スピードが出せない

いくらクッション性の高い素材を使っても、空気入りタイヤほどは振動を吸収することはできないので、路面からの抵抗が大きく高速走行には向いていません。

2. 乗り心地が悪い

1.と同じ理由で、乗り心地は空気入りタイヤに比べれば劣ります。

3. 重い

中にゴムや別の素材が入っているので、タイヤ自体が重く、その分燃費が悪くなります。またタイヤ交換などの作業も大変です。

様々な素材の研究や構造上の工夫を重ねて、日々進化しているノーパンクタイヤですが、空気に代わる素材を発見して、こうしたデメリットを全て克服することまでは難しそうです。

そう考えると、ソリッドタイヤしかない時代に「そうだ、タイヤに空気を入れてみよう」と思いついた人って、やはり偉大です。