タイヤ空気圧の雑学うんちく百科

鉄道のようだけど、タイヤを履いてる
新交通システムの空気圧

ゆりかもめのイメージ ゆりかもめのタイヤ

ゆりかもめのタイヤ。パンクしても走ることができるように、タイヤの中に「中子(なかご)」という金属の車輪が入っています。

点検作業風景■新交通システムがタイヤを
履かなくてはならない理由

日本ではじめて実用化された「神戸ポートアイランド線」を筆頭に、東京の一大レジャースポット「お台場」を一周する「ゆりかもめ」など、電車やバスにはない便利さや快適さを提供する新交通システムは、現在全国で11路線。一見すると鉄道のようですが、レールの上を走るのではなく「軌道」と呼ばれる専用の走行路を、タイヤを履いて走っています。電車のような乗り物なのに、なぜレールにしなかったのかといえば、まず第一に新交通システムが走行するコースには、大きな運河や道路との立体交差などアップダウンが多いために、登坂力が要求されるということ。そしてほとんどの路線で、駅の間隔が短いため、加速性・制動性に優れるタイヤでないと、平均速度が遅くなってしまうという理由からです。さらにタイヤを採用したことで、乗り心地が良い上に、走行音もほとんどなく快適性にも優れています。

日暮里・舎人ライナーのタイヤ

日暮里・舎人ライナーのタイヤ

窒素は高温でも膨張率が少ないので、空気圧が変化しにくい。

窒素は高温でも膨張率が少ないので、空気圧が変化しにくい。

■外気温に合わせて設定空気圧を
変える緻密な空気圧管理

さて新交通システムのタイヤとは、どんなタイヤなのでしょうか。詳しい情報を得るために、ほぼ同形の車両を採用している「ゆりかもめ」と「日暮里・舎人ライナー」の整備管理の担当部門に、お願いして直接教えていただきました。
まず大きさはといえば、外径約950mm、幅約310mmで、トラック・バスのタイヤとほぼ同じ。4本のタイヤで支える1車両当たりの乗客数は約60名で、タイヤ1本当たりの負荷荷重は、トラック・バスの1.7倍の約4.5トン。指定空気圧は約1000kPaです。
高度な安全性を実現する強靭な内部構造の劣化を防止するために、航空機のタイヤと同じように、窒素が充填されているようですが、窒素は、普通の空気よりも自然漏洩が少ないため、メンテナンス頻度削減と安全性向上にもつながり、近年乗用車やトラック・バスなどへも普及しています。
タイヤの空気圧点検については、90日に1回空気圧調整を含めた詳細な点検・整備を実施し、十分な安全管理体制が組まれていますが、さらに高度な安全性を追求するため、外気の温度変化に対応して、季節ごとに設定空気圧の基準値の変更を行っています。
タイヤの中の気体(窒素)は高温になればなるほど、膨張して体積が大きくなり、その分空気圧は高くなります。従って外気温の変化に合わせて、空気圧を調整しないと、厳密にはタイヤにとって最適な空気圧は実現しないというわけです。
「ゆりかもめ」と「日暮里・舎人ライナー」では、タイヤメーカーが割り出した温度による最適空気圧基準値のデータを基に、季節ごとに約50kPaほど設定空気圧の基準値を増減させて、より精度の高い空気圧管理を行っています。